彼:
高校生の頃は、よくバンドを組む妄想をしていた。
なお楽器は弾けない様子。

後輩:
オールディーズ音楽を好む。
洋楽がテレビCMに使われるのを見ると、何となく苛ついてしまう性質。


◆【20140522】
「瓜売りの少女……」
「何だ突然」
「いえ、私にもよくわからないのですが。今、降りて来ました」
「ああ。そういうのはあるな、偶に」
「折角なので、うりうりしていいですか」
「ふむ」
「うりうり」
「……地味に痛い」


◆【20140524】
「行けるところまでが、世界なら。見えるものだけが、世界なら」
「ああ」
「鍵を閉めて、こう……カーテンも、閉め切れば。この世界には、先輩と私、二人きりなのでしょうか?」
「……換気でもするか」
「あっ、ひどい」
「まあ、な。そういうのは、魅力的ではあるが……」
「あはは、わかってますって。それは、危うい考えだから。許されない考えだから」
「そういうことだ」
「でも、そうだったら良かったのにって。考えるのは……たぶん、やめられないと思います」
「……ああ」


◆【20140526】
「先輩」
「どうした」
「キス、しましょうか」
「……ふむ」
「ん……どうしました?」
「いや、珍しいと思ってな。こんな風に、直截的にとは」
「あはは……ですよね。でもたまには、ちゃんと言葉にしないと……うまく言えないのですが、そのことの意味が、消えちゃいそうで」
「確認、ということか」
「えと、ごめんなさい。自分でもよくわからなくなって」
「そうか。――そうだな。以心伝心もいいものだが、人と人が向き合うということ、言葉を尽くして、繋がりあうということ。そうやって試行錯誤してきたことを、大事にもしようと。こういう感じか」
「せ、先輩」
「ああ」
「ごめんなさい。今、にやにやが。にやにやが止まらなくて」
「……すまん」


◆【20140529】
「精神というものは、それだけであるのでしょうか。肉体が動くのに従って、付随的に発生しているのでは……」
「……」
「精神は肉体の影?」
「……」
「独り言です」
「……」
「何故独り言をしているのかというと、先輩が眠っていらっしゃるからです」
「……」
「大いなる眠りです」
「……」
「ひまですな」
「……」
「コーヒーでも淹れましょうか」
「……」

「……。何やら良い香りが」
「先輩。おはようございますっ」


◆【20140531】
「先輩。お帰りなさい」
「ただいま」
「ごはんにしますか? お風呂にしますか? それとも……」
「古典的だな」
「……って、言いますけど。正直、いつものパターンで決まってると思うんですよね」
「まあ、概ねはそうだろうな」
「私たちの場合だと、そうですね……」
「うむ」
「ごはんにしますか? お風呂にしますか? それとも……、」
「む」
「ごめんなさい。特に面白いネタが思い浮かばなくて……」
「……。まあ、飯の準備をしておくから、風呂を洗っておいてくれ」
「りょーかいしましたっ」


◆【20140603】
「ん……、どうしました、先輩?」
「焼き魚。随分熱心に食べるのだな、と」
「ああ。えっと、おかしいですか? 骨に身を残したくないので、こうやって……手に持って、そぎ落とすようにしているのですが」
「いや、おかしくなどない。むしろ褒められて然るべきだ」
「あ、そうですか。よかったです」
「ああ」
「ん。……」
「……」
「……」
「……」
「……あの。そんなじっくり、見ないでほしいのですけど」


◆【20140606】
「日中、暑くなってきましたねー」
「そうだな。蒸し暑くもなってきた」
「去年、こんなものでしたっけ?」
「いや。あからさまに今年が暑い」
「ですよね」
「……という会話を、去年もした覚えがある」
「あはは……」


◆【20140608】
「と、思ったら。またちょっと涼しくなりました」
「うむ。雨が降る日は寒いぐらいだ」
「抱きつく口実になっていいのですけどね」
「そうか」
「もはやコアラ」
「ちなみにだが、コアラは涼を取るために樹を抱いているらしい」
「わお、雑学。つまり暑いときには、先輩が冷たくなれば……」
「……それ、死んでないか?」


◆【20140612】
「買い物、終わりました。先輩はいかがです?」
「そうか。俺は特に何も無いが」
「……えっちな雑誌とか買うなら、外で待ってますけど」
「とは言うが。実際に買うとしたら、どうするつもりだ?」
「えっ。そりゃもちろん、ガン見しますが……」


◆【20140612-2】
「ドッペルゲンガー、ご存知ですか?」
「うむ。己と寸分違わぬ容貌で、世界に三人いるのだとか」
「でも今の時代、有名な人ならたくさんいそうですね。特に、声優さんとか」
「どういうことだ」
「ほら、ツイッターとかで……」
「……なりすまし!」


◆【20140615】
「私達、っぽさが足りないと思いませんか?」
「っぽさ、とは」
「んと、まあ色々ありますけど。例えば、『先輩と後輩』っぽさ」
「なるほどな。故に、っぽいことをしてみようと」
「ですです。っぽいことを」
「……。おい、焼きそばパン買ってこいよ」
「そっち系!?」
「いちごミルクも買ってこいよ」
「趣味が可愛い!」
「つりはいらねえ」
「なんかずれてきた!」


◆【20140615-2】
「しかし実際、鬱陶しくないか。先輩風を吹かせる事は……」
「いえいえ、そんなことは。もっと先輩先輩していいと思いますよ、先輩は」
「そうか? ならば、見た目でもアピールしてみるか」
「と、言いますと」
「頭の上に」
「あっ、もういいです……」


◆【20140615-3】
「先輩風の吹かせ方というのも、よくわからないな」
「そうですねえ。風……」
「うむ。風」
「こう、先輩ウインド! ですとか」
「速いな」
「先輩トルネード、先輩サイクロン」
「吹き飛ばす勢いか……」
「まあ、しがみつきますけどね。ぎゅーっと」


◆【20140615-4】
「先輩らしさはともかく、後輩らしさとは何だろうな」
「うーん……どうなのでしょう」
「歯切れが悪いな」
「いえ、いろいろと思い付きはするのですけど。結構散漫というか、後輩も一枚岩ではないのだな、と」
「そりゃそうだが。そうだな、ためしに挙げてみてくれ」
「先輩はほんとにだめだめですねー。私がいなきゃ何もできないんですからー、とか」
「ふむ」
「先輩、顔真っ赤。年上なのに、恥ずかしがりやさんなんですねー、とか」
「なるほど」
「ろーらくしちゃいますよー? とか」
「ほう」
「だ、駄目です先輩。こんな場所で……、とか」
「待て。何だそれは」


◆【20140615-5】
「難しいですねえ。『っぽさ』……」
「深く考えずとも、自分に一番親和する……自分がなってみたい後輩像を選べば、それで問題ないと思うがな」
「あはは、それもそうです。じゃあ私は」
「ああ」
「先輩に、思い切り甘えたいです」
「良いんじゃないか」
「わーい。先輩大好きー」
「うむ」
「……あれ、いつも通り?」


◆【20140622】
「ストライクレーザークローって響きがもう、好きで好きで」
「ああ、そういうのはあるな」
「先輩は何か?」
「ヘルキルデスベル、だろうか」
「いいですねえ。あれですと、三獅村祭が好きでした」
「合成魔法拳だな。浪漫以外の、何ものでもありはしない」
「ええ、もう。それはもう」
「洗練された必殺技名。もはや、一種の芸術だ」
「うっとり」


◆【20140622-2】
「先輩。今晩、何食べたいですか?」
「何でもいいが」
「それ、一番困るんですけど」
「と、言われてもな」
「……ですよねえ」
「うむ」
「そっちから聞いておいて、困る、とか言われても。はっきり言って、知ったこっちゃないですよ」
「ああ。都合の良い返答を期するという、エゴの押し付けの一種だろう」
「全く、ひどい話です」
「そうだな」
「ちなみに先輩。今晩、何食べたいですか?」
「鶏肉のトマト煮」
「おっけー、わかりましたっ」


◆【20140624】
「先輩と私と、結構な時間を一緒に過ごしてきたわけですけれども」
「そうだな。そして時間以上に、緊密だった。濃密だった」
「とすると、です。お互い、足りないものも見えてきていると思うのですよ」
「ふむ。自覚できない部分も、ということか」
「そういうことです」
「ならばたとえば、俺はどうだ。君からみた俺は?」
「先輩はですねー、幾つかありますけど。差し当たっては」
「うむ」
「栄養」
「……自覚はある」


◆【20140626】
「帰ってテレビを見ていたいのです」
「突然、どうした」
「最近アニメが面白いのです」
「ああ……」
「とにかくテストが難しいのです」
「まだ続けるか」
「でも実際、テストの点以上に大事なものはあるかもですね」
「だな。ま、学業を疎かにする言い訳にはならないが」


◆【20140629】
「先輩先輩、先輩せんぱいせーんぱいっ」
「元気が良いな。どうした」
「呼んでみただーけっ」
「そういう日なんだな」
「そういう日なのです」
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