彼:
きのこたけのこ論争はどうでもいいが、きりかぶが懐かしい。

後輩:
きのこたけのこ論争はどうでもいいが、変わり種は取り敢えず買う。


◆【20140420】
「もしや……」
「もやし!」
「もしゃっ」
「……」
「……」
「……あの、先輩。なんか、ごめんなさい」
「……いや」


◆【20140421】
「はー、ほんと疲れました、今日は、もう」
「学校か。お疲れ様だ」
「作って、繕って、誤魔化して。エネルギー使うんですよね。私がそのままでいられるのなんて、先輩の前くらいで……」
「そうは言うがな」
「ああ、お小言の予感……」
「人に環境にあわせ、幾つかの人格を使い分けることもあるとは思うが。そのどれが偽物で、どれが本物という事は無いんじゃないか。どれも全て、紛うことなき君だろう」
「むう、先輩。『ネットもリアル』のお話をしてますか? 分からなくはないですけど……残酷です」
「確かにな」
「でも。でも私はやっぱり、こうやって先輩に甘えてるときが、いちばん幸せだし……その私を、本当の私だって、思いたいんですよ……」
「……そうか。すまん」
「あはは。いいですよ」
「ならば甘えてくれ」
「みゃうん」
「可愛いな」
「にゃう」
「はは、ごろごろ」
「ごろごろごろごろ……ぼとん」
「……!?」


◆【20140422】
「人の恋路を邪魔する奴は……」
「馬に蹴られて死ね、という奴か?」
「しかもその人、きっと当て馬ですよ」
「どこの馬の骨とも知れぬ奴が、恋を成就するのだな」
「おお。やりますね」
「お互い様だ」
「……ウマいこと言いますね、とか言えば良かったでしょうか?」
「それは減点対象だ」
「そんな馬鹿な!」


◆【20140425】
「明日は明日の風が吹く……って、言いますね」
「ああ。『明日は今日とは別の日である』、だな」
「つまり……今日の風も。今日しか、吹かないんですよね?」
「そうだな」
「だったら、私は。たとえそれが、心地良いものでなくたって」
「ああ」
「今の風も、感じていたいです」
「だとすれば。今日の風は、どんなふうだ?」
「そうですね。こう、ぶわーって……わーお」
「……マリリン・モンロー!」


◆【20140426】
「ねえねえ先輩」
「どうした」
「あれやりましょう。あれ」
「了承した」
「では」
「うむ」
「……ごめんなさいっ、先輩。お待たせしちゃいました?」
「いや。俺も、今来たところだ」
「あ、そうでしたか。良かったです」
「……以上」
「うん……」


◆【20140426-2】
「昼間は、あったかくなってきましたけど。流石にちょっと、寒いですね」
「流石にな。時間が時間だ」
「あはは、朝の四時ですもんね」
「うむ」
「……ねえ、先輩」
「ああ」
「昔。こうして、今みたいな時間に……こうして、起きていて」
「……ああ」
「旅行か何かで、朝早く出発する日だったのだと思います。それで、不思議で、でも楽しくて、まるで現実じゃないみたいな……うまく、まとまりませんけど」
「わかる気がするな。同じ筈の景色が、見たことのない色で、香りで、手触りで」
「そうそう、そんな感じ。だからその日から、夜明けの時間に……憧れみたいな気持ちが、ありまして」
「そうか」
「……まあ。男の人に、後ろから抱き締められながら過ごすなんて、想像もしてませんでしたけど」
「はは、そりゃそうだ。……そういえば、毛布でも掛けるか。寒いなら」
「それは、なんというか……そのまま、寝ちゃいそうで」
「構わんさ」
「でも、勿体無いような……」
「眠い時に、眠りたい時に、気持ち良く寝られるという状況は、思う以上に良いものさ」
「でも、……というか、実はもう、眠っちゃいそうなんですよ。……先輩が、あったかいから」
「そうか」
「先輩が、あったかいから……」
「それを言うなら、」
「……」
「……。おやすみ」


◆【20140428】
「ねえ、先輩」
「うむ」
「コイって、なんだと思いますか?」
「……あー」
「そうですね。動物界脊索動物門脊椎動物亜門条鰭網骨鰾上目コイ目コイ科コイ亜科コイ属のお魚ですよね」
「……参考までに聞くが」
「……はい」
「覚えるのに、どれだけの労を費やした?」
「……昨日一日。まるごと」
「お疲れ様だ」
「わ、わっ。あ、ありがとうございます……?」


◆【20140429】
「先輩ー、暇ですー」
「ふむ。何かやるか」
「って、その『何か』が難しいのですけどね」
「そうだな。何か……」
「何か……なにか」
「……蟹」
「に、肉球」
「……。ううむ」
「……暇ですねえ」
「暇だな……」


◆【20140501】
「メタネタいきます」
「穏やかでないな」
「枯れと荒廃」
「惨いな……」


◆【20140502】
「はじめてのキスはレモンの味って、よく言いますけど」
「言うな」
「あれ、一体何なのでしょうか。リップ、それとも飴かガム……」
「甘酸っぱいという比喩にしても、レモンでは酸味が強すぎるな」
「ですねえ。……ふふ、そういえば」
「どうした」
「私のはじめては、米焼酎の味でした」
「……あの時は。すまん」
「あはは。らしくって、いいと思いますよ」


◆【20140504】
「『違う商品が出ることもあります』のガシャポン、見なくなったよな」
「なんですか、それ?」
「知らないか。例えば、ラインナップには、いかにもな変形・合体ロボットの玩具が提示されている」
「ふむふむ」
「隅の方に、小さく『違う商品が出ることもあります』と注意書きがある」
「見えてきました。それで、実際に回すと――」
「スーパーボールが出てくる」
「あはは……。田舎の商店とか、駄菓子屋なんかにありそうですね」
「なるほどな。行動範囲の違いもあるか」
「似たようなのだと、あれじゃないですか。『五百円の宝箱』」
「玩具売り場にある奴か」
「ですです。DSやなにかのゲームソフトが入っている、という触れ込みの」
「懐かしいな。今もあるとは」
「まあ流石に、あの手合いに騙されたりはしませんでしたけど。先輩もそうですよね?」
「……」
「……おお」


◆【20140506】
「あ、おはようございます、先輩。お邪魔してます」
「……おはよう」
「思うんですけど。ひざまくらって、ひざ関係ありませんよね」
「確かにな」
「ももまくら、ですかね?」
「……まあ、それはそれとして」
「はい」
「いつから俺の頭を乗せていたのか知らないが、脚。辛くないか」
「……。やばいです」


◆【20140507】
「何読んでるんですかー、先輩」
「これか」
「あ、チャンドラーですか。私もちょっと読みましたよ」
「ふむ、最近は新訳が出ているからな。村上……」
「うふう」
「――双葉十三郎!」
「拙者はすこぶるりこう者でござる」
「――双葉十三郎!」


◆【20140509】
「やはり苦手だな。披露宴、パーティ、そういった類は」
「いわゆる、ふぉーまるな場って奴ですか」
「うむ」
「でも先輩的には、ふぉーみゅらに帰りたい場なんですね?」
「そ、そこまでの速度は求めないが……」


◆【20140511】
「のどを触りたいです」
「……ご挨拶だな」
「なので、触らせてください」
「いやまあ、構いはしないが」
「わーい。ごろごろー」
「……」
「ごろごろー」
「……ごろごろ」
「おおーっ」


◆【20140513】
「何か飲むか」
「白湯、ロックで」
「……何だと」
「白湯、ロックで」
「……了承した。作って来よう」
「お願いします」

「……ぬるま湯ですねえ」
「ぬるま湯だろうな……」


◆【20140513-2】
「据え膳があったとしてもですよ、先輩」
「うむ」
「突然食べ始めるのはマナー違反だし、恥ずかしい事だと思うのです」
「そうだな。その通りだ」
「それに、毒見もしないと」
「板前の出番だな。料理の説明が必要だ」
「それで、食べる時は二人一緒に……」
「食前の挨拶も忘れずに」
「『手を合わせましょう』」
「小学校方式……」
「そこの男子、静かにしてください!」


◆【20140513-3】
「掛け合いって、一体何を掛け合うっていうんだろうな」
「水とかですかね?」
「終わりが見えなさそうだな」
「さもなくば冷や水?」
「俺も若くはないのだが……」


◆【20140517】
「そういえば、先輩」
「うむ」
「唐揚げに、勝手にレモン汁をかけられて怒る……って」
「あるあるネタだな。喧嘩に発展する事もあるという」
「……実際、見たことあります?」
「……ない」
「ですよねぇ」
「ま、マナーは大事であるとは思うが」

「しかし、唐揚げ。食べたくなってきたな」
「あはは。私もです」
「惣菜を買うか、食べに行くか。或いは……」
「折角なら、ですか」
「うむ」
「じゃあ買い物ですね。もも肉と、にんにく……粉類はありますよね」
「レモンも買わねばな」
「そして殴り合いへ……」


◆【20140520】
「空が。青いよな」
「空ですから」
「だが、青くない空もある」
「そうですね。いろんな色が……、黒い空も、黄色の空も、橙の空も、薄紫の空も、藍色の空も、真っ赤な空も、灰色の空も、真っ白な空も。確かに、ありますが」
「ああ」
「でも、今この瞬間の空は、青い。それは、間違いないと思います」
「ああ……そうだ。そうだな」
「あの……先輩。青以外の空は、お嫌いですか?」
「……いや。そういうわけじゃないが……何だろうな。不安なんだ、もうこのまま、二度と青空は見られないんじゃないか、と……」
「ん……」
「すまん。無茶苦茶だな」
「あはは、いえいえ。……でもね、先輩。たとえ青空が、二度と訪れなくたって」
「ああ」
「私は。先輩のそばに、ずっとずっといますから」
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